工事写真は、埋めたら二度と見えなくなるものを、あとから確かめられるように残す記録です。現場に入ったばかりの人ほど「何を、いつ、黒板に何を書いて撮るか」で迷い、撮り忘れに気づくのは台帳をまとめる段階です。

この記事は、現場の若手や工事担当の人向けに、国土交通省の写真管理基準(案)とデジタル写真管理情報基準を開いて確かめた決まりだけを使って、撮り方と台帳の説明の書き方をまとめたものです。結論を先に言うと、撮る前に撮影箇所一覧表で「時期」を確かめ、黒板は必要な事項だけを読める大きさで書き、写真は編集しない。この3つを押さえれば大きく外しません。

なお、ここで紹介する基準は国土交通省が土木工事に適用しているものです。自治体や民間の工事、建築工事では扱いが違うことがあるので、特記仕様書と監督職員の指示を必ず先に確かめてください。

先に結論:工事写真の撮り方は4つの決まりで押さえる

押さえること写真管理基準(案)などでの決まり現場でやること
いつ撮るか撮影箇所一覧表の「撮影頻度」と〔時期〕に基づいて撮る工種ごとに、施工前・施工中・施工後のどこで撮るかを先に書き出す
黒板に何を書くか工事名、工種等、測点(位置)、設計寸法、実測寸法、略図のうち必要な事項写真の種類ごとに要る項目だけを書き、文字が読めるように写す
写真に手を加えるか信憑性を考慮し、写真の編集は認めない明るさ補正や切り抜きをしない。撮り直すならその場で
どう整理するか写真原本を電子媒体に入れて提出。整理はデジタル写真管理情報基準に従う原本は別に残し、台帳の説明は撮影項目と時期がわかる書き方にする

台帳づくりの手間を減らしたいなら、exbk.jp の工事写真台帳のアプリ(無料・登録なしで使える)が使えます。写真をまとめて取り込み、1枚ごとに工種・測点・撮影日・説明を付けて、A4の台帳として印刷できます。

撮り方の決まりを覚えるのと同じくらい効くのが、自分の現場の写真の撮り方や台帳の形を、書式として手元に持っておくことです。現場の人が日本語で指示してその書式をアプリにする方法は、建設業向けの Claude Code 研修で学べます。

工事写真は何のために撮るのか

写真管理基準(案)は、土木工事施工管理基準に定める土木工事の「工事写真による管理」に適用される基準です。つまり工事写真は、きれいな記念写真ではなく、施工管理の証拠です。

特に大事なのは、完成すると見えなくなる部分です。基準は撮影の留意事項として、不可視となる出来形部分は、出来形寸法(上墨寸法を含む)が確かめられるよう「特に注意して撮影する」としています。検査の日に掘り返して寸法を測るわけにはいかないので、その寸法を証明できるのは写真だけです。

基準が挙げる工事写真の分類は次のとおりです。

分類どんな写真か(撮影箇所一覧表の例)
着手前及び完成写真全景または代表部分。着手前1回、施工完了後1回
施工状況写真工事の進み具合(月1回〔月末〕)、設計図書や施工計画書どおり施工していることがわかる写真
安全管理写真標識や保安施設の設置状況、交通整理、安全訓練など
使用材料写真材料の形状寸法、使用数量、保管状況、品質証明(JISマーク表示)、検査の様子
品質管理写真各種試験の実施中の様子。別表の品質管理の撮影箇所一覧表に従う
出来形管理写真寸法の確認。別表の出来形管理の撮影箇所一覧表に従う
災害写真・事故写真被災や事故の状況。前・直後・後に撮る
その他公害、環境、補償など

なお、基準は写真を「映像と読み替えることも可」としていますが、この記事では写真に絞って書きます。

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黒板に書くことと、写し方

記載事項は6つ。全部を毎回書くわけではない

写真管理基準(案)の撮影方法では、次の項目のうち必要事項を書いた小黒板を、文字が判読できるよう被写体と一緒に写し込むとされています。

①工事名 ②工種等 ③測点(位置) ④設計寸法 ⑤実測寸法 ⑥略図
(写真管理基準(案)令和7年3月「2-2 撮影方法」より)

「必要事項」とあるとおり、6つを毎回そろえる決まりではありません。どの写真でどれを書くかの目安を、見本として表にします。発注者や監督職員の指示があれば、そちらに従ってください。

写真の種類書くことが多い事項(見本)考え方
着手前・完成工事名、工種等、測点どこを写した写真かがわかれば足りる
施工状況工事名、工種等、測点何の作業中かを残す
出来形管理工事名、工種等、測点、設計寸法、実測寸法、略図寸法の証明が目的なので、数字と略図が要る
使用材料工事名、材料名(工種等)、規格や寸法何をどれだけ使ったかを残す

字が読めない黒板は、書いていないのと同じ

基準は「文字が判読できるよう」と書いています。現場でよくある失敗は、全景を入れようと引きすぎて黒板の字がつぶれることと、黒板に日光が反射して白く飛ぶことです。

黒板が読みにくくなってしまったときの扱いも、基準に書かれています。小黒板の判読が困難な場合は、デジタル写真管理情報基準に定める写真情報(写真管理項目の「施工管理値」)に必要事項を記入して整理する、というものです。デジタル写真管理情報基準でも、施工管理値の欄は「黒板の判読が困難な場合、設計寸法及び実測寸法等の補足事項を記入する」欄とされています。

ただしこれは救済の手段です。撮り直せる場面なら、その場で黒板を寄せて撮り直すほうが確実です。

画素数の目安

写真はカラーで撮ります。有効画素数は小黒板の文字が読めることを目安に、100万画素程度から300万画素程度(1,200×900程度から2,000×1,500程度)とされています。デジタル写真管理情報基準の解説には、画素数を必要以上に大きくすると、ファイルが大きくなって電子媒体が何枚にもなり、扱いにくくなるとも書かれています。

スマートフォンの初期設定は、この目安より大きいことが多いようです。発注者から提出の形式について指示があれば、それに合わせてください。

撮る時期:着手前から完成まで

撮影箇所一覧表の〔時期〕を先に見る

写真管理基準(案)では、工事写真は撮影箇所一覧表に示す「撮影頻度」に基づき撮影するとされています。一覧表には、頻度と一緒に〔着手前〕〔施工中〕〔施工後〕〔使用前〕のような撮る時期が書かれています。撮り忘れの多くは、この時期を現場に出る前に見ていないことが原因です。

全体の撮影箇所一覧表から、撮る時期がはっきり書かれているものを抜き出すと次のようになります。

撮影項目撮影頻度時期
着手前(全景または代表部分)着手前1回着手前
完成(全景または代表部分)施工完了後1回完成後
工事の進捗状況月1回月末
仮設(指定仮設)の使用材料・仮設状況・形状寸法1施工箇所に1回施工前後
図面と現地の不一致必要に応じて発生時
標識類・保安施設の設置状況各種類ごとに1回設置後
使用材料の形状寸法・使用数量各品目ごとに1回使用前
災害・事故・補償関係その都度前・直後・後

災害と事故、補償関係は「前」の写真も求められています。摘要には「発生前は付近の写真でも可」とあります。着手前の写真を広めに撮っておくと、ここで役に立ちます。

撮り直しがきかない写真

撮り忘れても翌日撮れる写真と、二度と撮れない写真があります。先に後者を押さえます。

撮り直しがきかない写真理由対策(見本)
着手前工事を始めた時点で元の状態は消える初日の作業前に、全景を起点側と終点側から撮る
埋め戻す部分・隠れる部分の出来形埋め戻し、型枠の中、舗装の下は後から見えない埋め戻しや打設の前に「撮ったか」を声に出して確かめる
使用前の材料の数量使ってしまうと数えられない搬入した日に撮る
災害・事故の直後片付けると状況がわからなくなる安全を確保したら、片付ける前に撮る
図面と現地の不一致施工すると元の状態が消える気づいた時点で撮り、工事打合簿に添付する

「図面と現地の不一致」の写真は、一覧表の摘要で工事打合簿に添付するとされています。

撮らなくてよい場合もある

撮らなくてよい写真も、基準に書かれています。

  • 品質管理写真で、公的機関で実施された品質証明書を保管整備できる場合
  • 出来形管理写真で、完成後に測れる部分は、出来形管理の状況がわかる写真を工種ごとに1回撮り、あとは省略
  • 監督職員または現場技術員が臨場して段階確認した箇所の出来形管理写真(臨場時の状況写真も不要)

撮影項目や頻度が工事内容に合わないときは、監督職員の指示で追加や削減をすること、一覧表にない工種は監督職員と協議して扱いを決めることも書かれています。迷ったら自分で決めずに、監督職員に聞くのが決まりです。段階確認の予定を落とさない方法は、段階確認・立会いの予定管理で紹介しています。

写真の編集はしない

写真管理基準(案)は「写真の信憑性を考慮し、写真編集は認めない」としています。デジタル写真管理情報基準にも同じ一文があります。

現場で気をつけたいのは、悪気のない加工です。暗い写真を明るくする、余計なものが写ったので切り抜く、傾きを直す。どれも写真の編集にあたる可能性があります。暗く写ったなら、その場で撮り直してください。

例外が1つあります。写真管理基準(案)は、国の通知(『デジタル工事写真の小黒板情報電子化についての一部改定について』令和5年3月15日付け、国技建管第6号)に基づく小黒板情報の電子的記入は、写真編集に当たらないとしています。いわゆる電子黒板で撮る方法です。使えるかどうか、どの機器を使うかは、発注者の指示を確かめてください。

台帳に残す説明の書き方

説明は「撮影項目」と「時期」がわかるように

国の工事の電子納品では、写真ごとにデジタル写真管理情報基準の写真管理項目を記入します。その中の「写真タイトル」は、写真の撮影内容がわかるように、写真管理基準(案)の撮影項目、撮影時期に相当する内容を書く欄とされています。

紙やPDFの写真台帳の説明を書くときも、この考え方がそのまま使えます。書き方の見本を並べます(工事名や数値は見本です)。

よくない説明書き直した説明(見本)直したところ
側溝L型側溝工 据付状況〔施工中〕工種と、何の場面か、時期を書いた
床掘り床掘り完了 掘削深さ確認〔埋戻し前〕何を確かめた写真かと、時期を書いた
出来形基礎工 幅 設計 500 実測 505〔施工後〕測った項目と、設計と実測の数字を書いた
材料再生砕石 RC-40 搬入状況〔使用前〕材料の名前と規格、時期を書いた
着手前着手前 全景(No.0 起点側から)どこから写したかを書いた

台帳にも入れておきたい項目

デジタル写真管理情報基準の写真管理項目のうち、台帳でも1枚ごとに持っておくと便利なものを表にします。

写真管理項目基準での記入内容台帳での使い方(見本)
写真区分着手前及び完成写真、施工状況写真など、写真管理基準(案)の分類撮影箇所一覧表と照らし合わせるときの見出し
工種・種別・細別新土木工事積算体系の工種・種別・細別(記入可能な場合)工種ごとに写真を並べる
写真タイトル撮影項目、撮影時期に相当する内容上の表の「書き直した説明」
撮影箇所測点位置、撮影対象までの距離、撮影内容など「No.3 右側」のように書く
撮影年月日撮影した年月日(西暦で10桁)2029-09-03 のように書く

電子納品の写真ファイル名、フォルダの組み方、記入が必須かどうかなどの細かな決まりは、デジタル写真管理情報基準に書かれています。工事ごとに発注者から指定されるソフトや形式もあるので、ここでは台帳の説明に使える部分だけを紹介しました。

原本は台帳と別に残す

提出するのは、撮影した写真原本です。基準では、原本を電子媒体に格納して監督職員に提出するとされています。台帳を作るときに写真を縮小したり並べ替えたりしても、原本はそのまま別の場所に残してください。置き場所を1か所にせず、事務所のパソコンと外付けの記憶装置のように分けて持つ の考え方が参考になります。

デジタル写真管理情報基準は、原本の通し番号を「工事の経緯がわかるように日付昇順に付番すること」を基本としています。撮った順に並べておけば、あとで台帳に並べ直すときも迷いません。

台帳づくりをアプリで短くする

撮り方がそろっても、台帳づくりには時間がかかります。写真を1枚ずつ貼り、大きさをそろえ、工種や説明を書き込む作業の繰り返しだからです。

工事写真台帳のアプリの画面。台帳名と、写真の横に工種・種別、測点・位置の欄が並ぶ。表示しているのはアプリに入っている見本データ
工事写真台帳のアプリの画面。台帳名と、写真の横に工種・種別、測点・位置の欄が並ぶ。表示しているのはアプリに入っている見本データ

exbk.jp の工事写真台帳のアプリ(無料・登録なしで使える)では、写真をまとめて選ぶと取り込まれ、1枚ごとに工種・種別、測点・位置、撮影日、説明を入れて「A4で印刷」で台帳にできます。撮影日は写真ファイルの日付が最初から入ります。この記事の「書き直した説明」の形で説明欄を書けば、そのまま台帳の説明になります。

気をつけたい点もあります。アプリに保存される写真は長辺1,280ピクセルに縮小されたもので、写真はその端末のブラウザの中にだけ保存されます。電子納品に使う原本は、アプリとは別に必ず残してください。画面の使い方の詳しい説明は、工事写真台帳を無料で作るアプリの紹介にまとめています。

このアプリは で作りました。黒板の書き方や台帳の項目は、発注者や会社の決まりで少しずつ違います。自分の現場の形に合った台帳や撮影チェック表を、現場の人が日本語で指示して作れるようにするのが、建設業向けの研修です。プログラミングの経験は要らず、作業日報や KY 活動シート、工事写真台帳のような書類を題材に、2時間の授業を5回、Zoom のライブで進めます。

建設の書類仕事のどこから手を付けるかは、建設業のAI活用は書類からでも紹介しています。

撮る前に決めておくこと

決めること誰と見本
使う基準と特記仕様書監督職員国の土木工事なら写真管理基準(案)。自治体の工事は自治体の基準を確認
撮影箇所一覧表の抜き出し現場代理人と担当者工種ごとに撮る項目と時期を1枚にまとめ、朝礼で確かめる
電子黒板を使うか監督職員使う場合は機器と扱いを確かめる
原本の置き場所とファイルの並べ方社内撮った日に事務所のパソコンへ移し、日付順に保管
台帳の説明の書き方社内「工種 撮影項目〔時期〕」の形でそろえる

よくある失敗

  • 埋め戻してから撮り忘れに気づく:埋め戻し前の出来形写真は撮り直せません。埋め戻しや打設の前に、担当者が声に出して確かめる手順を入れます。
  • 全景を入れようとして黒板が読めない:黒板用の寄りの写真と、場所がわかる引きの写真を分けて撮るのも一つの方法です。
  • 暗い写真を明るく加工する:写真の編集は認められていません。その場で撮り直します。
  • 説明が工種名だけ:「側溝」だけでは、何を確かめた写真かわかりません。撮影項目と時期まで書きます。
  • 台帳用に縮小した写真しか残っていない:提出するのは原本です。縮小前のファイルを別に保管します。

まとめ

  • 工事写真は、撮影箇所一覧表の撮影頻度と〔時期〕に基づいて撮る。現場に出る前に、工種ごとの撮る時期を確かめておく
  • 小黒板には、工事名、工種等、測点、設計寸法、実測寸法、略図のうち必要な事項を書き、文字が読めるように写す
  • 写真の編集は認められない。小黒板情報の電子的記入は国の通知に基づくものなら別扱い
  • 撮り直しがきかないのは、着手前、埋め戻す部分の出来形、使用前の材料、災害や事故の直後
  • 台帳の説明は、撮影項目と時期がわかるように書く。原本は台帳と別に残す

撮り方の決まりは発注者ごとに違いがあるので、自分の現場の写真の決まりを手元の書式にしておくと、若手に引き継ぐときも迷いが減ります。その書式を社員が自分でアプリにする方法は、建設業向けの Claude Code 研修で学べます。