SOAPは、看護学生のうちに習うのに、現場に出ると急に書けなくなる型です。実習では時間をかけて1枚を書いていたのが、受け持ちが6人になって、記録は勤務の終わり際にまとめて書くことになるからです。

この記事は、S・O・A・Pのどの欄に何を書くかと、現場でつまずきやすい場所——Oに主観が混ざる、AとPが重なる、Aが感想で終わる——を、よくない例と書き直した例の表でまとめたものです。例文と数値はすべて架空の見本で、実在の患者さんや病院の話ではありません。

先に結論:4つの欄は「聞いた・見た・考えた・する」で分ける

迷ったときは、この4語に戻せば足ります。

欄中身ひとことで言うと書くときの目印
S(主観的情報)患者さんやご家族が話したこと聞いた「 」でそのまま残す
O(客観的情報)測った値、見た事実、処置の内容見た数字と、誰が見ても同じになること
A(アセスメント)SとOから、看護として考えたこと考えた「〜のため」「〜と考える」で理由を添える
P(計画)次に誰がいつ何をするかする主語と時刻が入っている

順番にも意味があります。聞いて、見て、それをもとに考え、することを決める。この流れが崩れていなければ、文章がうまくなくても記録としては通じます。逆に、Aに書いた判断のもとになる事実がOにないと、読んだ人はなぜその結論なのかをたどれません。

書式に沿って手を動かすほうが早いという人は、exbk.jp の看護記録(SOAP)のアプリを開いてみてください。日付・時刻・患者・病室・記録者・看護上の問題と、S・O・A・Pの欄が並んでいるだけの簡単なものです。無料で、登録なしで使えます。患者ごと・日付順に読み返せて、印刷もできます。

看護記録(SOAP)アプリの画面。S・O・A・Pの欄が並ぶ。表示しているのは架空の病棟・架空の患者の見本データ
看護記録(SOAP)アプリの画面。S・O・A・Pの欄が並ぶ。表示しているのは架空の病棟・架空の患者の見本データ

こうした病棟の書式を、業者に頼まず自分たちで作れるようにする看護・医療向けの Claude Code 研修も行っています。記録の型が決まっている仕事ほど、作る側に回ると楽になります。

S(主観的情報)——聞いたことを、言い換えずに残す

Sに入るのは、患者さんやご家族の言葉です。看護師が要約した時点で情報が落ちるので、できるだけそのまま書きます。

よくない例書き直した例直したところ
疼痛の訴えあり。「昨日より痛い。息を吸うとズキンとする」部位と痛み方が本人の言葉で残った
不安が強い様子。「手術のあと、歩けなくなる人もいるって聞いて」何を不安に思っているかがわかる
食思不振の訴え。「においがだめ。ごはんは見るのもつらい」食べられない理由の手がかりが残った

「訴えあり」は、看護師が訴えとして受け取った結果で、本人の言葉ではありません。あとで痛みの変化を比べたいときに、「昨日より痛い」があるかどうかで差が出ます。

話せない患者さんのときは、Sが空欄でもかまいません。無理に「苦痛様表情あり」と入れると、それはOに書くべき観察になります。ご家族から聞いた話をSに入れるときは、「(長女より)」のように誰の言葉かを添えます。

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O(客観的情報)——判断語が混ざりやすい

Oは、誰が確かめても同じになることだけを書く欄です。ところが、現場でいちばん主観が混ざるのもここです。

Oに入りがちな判断語

「落ち着かない」「不穏」「顔色不良」「食欲低下」「ADL低下」。どれも便利ですが、読む人には何を見たのかが伝わりません。

よくない例(O)書き直した例(O)判断はどこへ
落ち着かない様子。10分間で3回起き上がり、点滴のルートを右手で触っていた。「せん妄の徴候と考える」はAへ
顔色不良。口唇と爪床が蒼白。SpO2 94%(室内気)、脈拍98回/分。「酸素化の低下が疑われる」はAへ
食欲低下。昼食は主食2割、副食1割。10分で箸を置いた。「摂取量が3日続けて半分以下」はAへ
創部問題なし。創部、発赤・腫脹なし。ガーゼ汚染なし。体温36.8℃。「経過は良好と考える」はAへ

コツはひとつです。Oの文を読んで、その場にいなかった人が同じ絵を描けるか。描けないなら、それは見たことではなく考えたことです。

Oに入るもの、入らないもの

  • 入る:バイタルサイン、検査値、水分量や尿量、体位、皮膚の所見、行った処置やケア、指示された薬剤を投与した事実
  • 入らない:「〜と思われる」で終わる文、原因の推定、次にすることの予定

薬剤については、何をどれだけ使ったかという事実はOに書けます。どの薬を選ぶか、量を変えるかは医師の指示の領域なので、看護記録では「◯時、指示どおり◯◯を投与」と事実を残し、判断が必要な所見はPで報告に回します。

A(アセスメント)——「考えた理由」まで書く

Aは、SとOをもとに、看護として今どういう状態かを述べる欄です。ここが「観察していく」で終わると、記録全体が薄くなります。

書き方の形をひとつ覚えておくと安定します。

(Oの事実)のため、(今の状態の見立て)。(このあと起こりうること)。

見本で示します。架空のデータです。

S:「一人で行けると思った。痛いところはない」
O:6:10、トイレ前で床に座っているところを発見。見える範囲に傷はなし。血圧118/70、脈拍82回/分、麻痺なし。前日21時に眠前薬を内服。夜間の排尿は3回。
A:夜間の排尿回数が多く、眠前薬を内服した状態で一人で移動したことが転倒につながったと考える。本人は自立して動ける感覚があり、ナースコールを使う必要を感じていない。同じ動き方が続けば、再び転倒する可能性が高い。
P:本日中に転倒アセスメントを再評価。夜勤帯は22時・1時・4時の巡回時にトイレの声かけを行う。ベッド柵と離床センサーの位置を日勤で見直す。本人とご家族に、夜間はコールを押してもらうよう説明(受け持ち看護師)。

Aで避けたいのは、次の3つです。

Aのよくない例何が問題か書き直しの方向
経過観察していく。次の行動なのでPの中身今どういう状態かを書く
本人の理解が悪い。評価が人物に向いている何がどこまで伝わっているかを書く
転倒の危険が高い。理由がない「夜間排尿3回と眠前薬内服のため」と根拠を添える

診断名をAに書きたくなることがありますが、診断は医師の役目です。看護記録のAでは、看護計画に挙げた問題(転倒の危険、疼痛、セルフケア不足など)に沿って、その問題が今どうなっているかを書きます。気になる所見があれば、事実をOに残し、報告をPに書くほうが確実です。

AとPの区別がつかなくなったときの分け方

いちばん多い質問がこれです。判定は簡単で、その文に主語と時刻を足せるかどうかで分かれます。

文主語と時刻を足せるか欄
疼痛が食事量の低下につながっていると考える足せないA
日勤で、食前30分に鎮痛薬の内服を確認する足せるP
セルフケアの範囲が広がってきている足せないA
明日の朝、洗面を見守りに変更する足せるP

Pは、次の勤務の人がそのまま動ける粒度まで下ろします。「観察」ではなく「何を、何回、いつ」。「指導」ではなく「誰に、何を、どう伝える」。ここが具体的だと、申し送りが短くなります。申し送りの型については看護サマリーの書き方にまとめました。

場面別の見本:SOAPの4行

実際の記録はこのくらいの長さで足ります。以下はすべて架空の見本です。

術後1日目、離床が進まない

S:「動くと傷が引っぱられる感じがする。座るだけならできる」
O:10:00、端座位5分可。立位は「今日はやめておく」と中止。創部の発赤なし。体温36.9℃、血圧126/74。鎮痛薬は8:00に内服済み。
A:痛みそのものより、動いて傷が開くことへの不安が離床を妨げていると考える。端座位が保てており、段階を踏めば立位は可能と考える。
P:午後の訪室時に、創部は固定されていることを説明。14:00に立位、ベッドサイド2歩を目標に付き添う(日勤)。明日の朝、鎮痛薬内服30分後に離床を試みる。

発熱があり、当直医に報告した

S:「寒気がする。布団をもう1枚ほしい」
O:2:40、体温38.4℃(腋窩)。悪寒戦慄あり。脈拍104回/分、血圧108/62、SpO2 96%(室内気)。末梢ルート刺入部に発赤なし。尿は混濁なし。
A:悪寒を伴う発熱で、夕方の37.2℃から上昇している。感染源は記録上は特定できない。
P:2:45、当直医に報告し指示を受ける。指示内容は指示簿に記載。3:45に再検温。発汗時は寝衣交換。朝の申し送りで熱型表を確認する(夜勤)。

このとき、Aに「肺炎の疑い」のような病名を書くと、医師の判断より先に看護記録が診断をしたことになります。書くのは、上がってきた経過と、看護として確かめた範囲までです。

インシデントとして報告する場面の分け方は医療安全の研修の記事で、報告書の書き方と合わせて整理しています。

書き終わりの5つの見直し

提出前に、次の5つだけ見ます。

  1. Oに「〜と思われる」「〜の様子」が残っていないか
  2. Aの結論を支える事実が、Oに書いてあるか
  3. Aに「観察していく」で終わる文がないか
  4. Pに主語(誰が)と時刻が入っているか
  5. Sが看護師の要約になっていないか

この5つは、書式のほうに並べておくと毎回思い出せます。看護記録(SOAP)のアプリでは、看護上の問題の番号と表題を先に書く欄があり、そのあとにS・O・A・Pが続きます。問題を先に決めてからAを書くと、「何についてのアセスメントなのか」がぶれません。入力したものは患者ごとに日付順で並び、そのまま印刷できます。医療の現場向けに作ったほかのアプリは看護・医療アプリの一覧にあります。

患者さんの情報を、生成AIや外部のサービスに入れない

記録の下書きに生成AIを使ってみたい、という声はよく聞きます。ここは慎重に線を引いてください。

では、病歴や診療の情報は要配慮個人情報にあたります。個人情報保護委員会と厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」も、診療録やケアプランを含む情報の安全管理と第三者提供の制限を示しています。氏名を消しただけでも、病棟名・入院日・疾患の組み合わせで個人が特定できることがあります。実在の患者さんの情報は、病院が使うと決めていないサービスに入れない。この一線だけは、便利さと引き換えにしないでください。

もうひとつ、生成AIはもっともらしい嘘を書きます(と呼ばれます)。記録に数値や経過をAIに補わせると、確かめていない事実が混ざります。

そのうえで、型を覚える練習には使えます。この記事を書くのに使った生成AI(Claude)に、上の「術後1日目」と同じ条件の架空の見本データを渡して、S・O・A・Pに振り分けた下書きを作らせてみました。S・OとAの振り分けはおおむね型どおりでしたが、Pが「疼痛コントロールを継続する」のように誰がいつ何をするかのない文になり、Aにも「離床の遅れによる合併症のリスクがある」と書かれていました。合併症の見立ては渡した見本データからは出てこない内容で、こちらで消しました。つまり、型どおりの見本は出せても、中身が妥当かどうかは人が読んで決めるしかない、という結果でした。

安全に使うなら、架空の見本データで書式や練習問題を作る用途にとどめ、実在の記録はアプリやの中で扱う、という切り分けになります。看護の業務でAIをどこまで使えるかは看護でのAI活用に整理しました。

病棟のルールに合う書式を自分たちで作れると、この線引きも自分たちで引けます。看護・医療向けの Claude Code 研修は、看護サマリー、インシデントレポート、申し送り、勤務表といった病棟の書類業務を、日本語で指示してアプリにする内容です。看護記録や報告書、勤務表、物品管理を担当している看護師・准看護師・看護補助者・医療事務の方が対象で、全10時間(2時間×5回)のZoomライブ研修として行っています。患者情報の扱い方も回の中に入っています。

看護記録は何年とっておくのか

医療法施行規則の第二十条では、病院が備えるべき「診療に関する諸記録」を挙げており、原文は次のようになっています。

診療に関する諸記録は、過去二年間の病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院患者及び外来患者の数を明らかにする帳簿並びに入院診療計画書とする。

看護記録がこの中に入っていることと、過去二年間分という期間は、ここで確かめられます。ただし診療録(カルテ)には別の定めがあり、訴訟や請求に備えて独自に長くとっている病院もあります。実際に何年残すかは、勤務先の規程と、所管の自治体・保健所の取扱いで確かめてください。

まとめ

  • S・O・A・Pは「聞いた・見た・考えた・する」で分ける。順番が崩れていなければ記録として通じる
  • Oでつまずくのは判断語。「落ち着かない」「顔色不良」は、見た事実に置き換えてAへ移す
  • Aは理由込みで書く。「観察していく」と書きたくなったら、それはPの中身
  • Pは主語と時刻を入れて、次の勤務の人がそのまま動ける粒度まで下ろす
  • 病名の判断は書かない。事実をOに残し、報告をPに書く
  • 実在の患者さんの情報は、病院が使うと決めていないサービスに入れない

型は覚えれば終わりますが、病棟ごとに違う書式まで既製品に合わせるのは無理があります。看護・医療向けの Claude Code 研修では、自分の病棟の書式を自分たちの手でアプリにするところまでを扱っています。アプリは で作りました。