広告費と違う、SEOの費用の3つの性質
同じ集客の費用でも、SEOは広告と性質が違います。この違いを計算に入れないと、上限額を低く見積もりすぎたり、高く見積もりすぎたりします。
成果が出る前に払う期間がある
Google広告なら、配信を始めた日からクリックが発生し、問い合わせも来始めます。SEOは、記事を公開したりサイトを直したりしてから、検索結果に反映されるまでに時間がかかります。
GoogleのSEOスターターガイドには、変更がGoogleに反映されるまでに数時間かかるものもあれば数か月かかるものもある、と書かれています。一般的には数週間待ってから検索結果に良い影響があったかを確認するようすすめています。そのうえで、変更しても目に見える変化が出ないこともある、とも書いています。
つまりSEOの費用には、成果が出る前に払う「先払いの期間」があります。この期間の長さは、狙う言葉の競争の激しさやサイトの状態で変わるので、誰にも正確には分かりません。計算では、成果が出始める月を遅めに置いておくのが安全です。
止めても記事が残って積み上がる
広告は、支払いを止めた日から表示されなくなります。SEOで作った記事やサイトの改善は、外注の契約をやめてもサイトに残ります。そのため、止めた後もしばらく検索から人が来ることがあります。
もう1つの違いは、積み上がることです。今月書いた記事は、来月以降も読まれる可能性があります。記事が増えるほど、1か月あたりの問い合わせも増えていく形になりやすいです。広告費が「使ったらなくなる費用」だとすれば、SEOの費用は「一部が資産として残る費用」に近いです。
ただし、残った記事の効果がずっと続くとは限りません。競合が同じテーマで良い記事を出したり、書いた情報が古くなったりすれば、順位は下がりえます。記事の
が必要になるのはこのためです。この記事の計算では、止めた後の効果は数えずに、安全側で見ます。
社内の作業時間もかかる
SEOは外注しても、社内の仕事がゼロになりません。記事の内容が正しいかの確認、専門的な質問への回答、社長や技術者への取材、サイトの修正の承認などが残ります。自社で記事を書くなら、その時間はさらに増えます。
見積書には、この時間が載りません。外注費が月10万円の契約でも、社員が月20時間使っていれば、その分の人件費も払っています。計算では、社内の作業時間を金額に直して、外注費に足します。
払ってよい上限額を出す手順
ここから、4つの数字を1つずつ埋めます。数字はすべて「仮に」置いた例で、実在の会社の実績や業界の平均ではありません。
手順1:問い合わせ1件の粗利を出す
最初に、問い合わせ1件からどれだけの
が見込めるかを出します。
問い合わせ1件の粗利 = 受注1件の粗利 × 問い合わせから受注になる割合
仮に、受注1件の粗利が80万円で、Webからの問い合わせの2割が受注になるなら、問い合わせ1件あたり16万円です。5件の問い合わせで1件受注する計算なので、5件分の粗利80万円を5で割ったのと同じです。
受注になる割合は、紹介経由より低く出ることが多いので、できればWebからの問い合わせだけで数えてください。記録がない場合は、低めに置いておくと安全です。ここで出す数字は、検索から来た人が問い合わせる割合である
とは別物です。
継続して取引が続く商売なら、取引全体の粗利(
)で計算する方法もあります。ただ、SEOは回収までの期間が長いので、1回目の取引の粗利で計算しておくほうが、見込み違いのときの影響を小さくできます。
手順2:増える問い合わせの見込みを月ごとに置く
次に、SEOで問い合わせが月に何件増えそうかを、月ごとに置きます。ここが広告の計算といちばん違うところです。広告なら「毎月◯件」と平らに置けますが、SEOは0件から始まって、少しずつ増えていく形になります。
たとえば次の表のように置きます。
| 期間 | 増える問い合わせ(月あたり) |
|---|---|
| 1〜3か月目 | 0件 |
| 4〜6か月目 | 1件 |
| 7〜9か月目 | 2件 |
| 10〜12か月目 | 3件 |
| 13か月目以降 | 4件 |
最後の「月4件」が妥当かは、狙う言葉の検索数から確かめます。仮に、狙う言葉の検索数が合計で月2,000回、そのうち自社の記事がクリックされる割合(
)が5%、記事を読んだ人の問い合わせ率が1%なら、月1件です。月4件を見込むなら、検索数がこの4倍、つまり月8,000回ほどある言葉を狙う必要がある、ということになります。
BtoBの商材では、検索数そのものが少ない言葉が多いです。複数の語を組み合わせた
を数多く集めて足し算することになりやすいので、狙う言葉の一覧と検索数は、見積もりの段階で出してもらうとよいでしょう。
手順3:社内の作業時間を金額にする
社内の作業時間を、時給に換算して金額にします。
社内の作業費 = 月の作業時間 × 1時間あたりの人件費
たとえば担当者が記事の確認と取材対応に月10時間使い、1時間あたりの人件費が5,000円なら、月5万円です。社長が取材に応じる時間も、忘れずに数えてください。社長の1時間は、社員の1時間より高く見積もるのが自然です。
この金額は、外注の範囲によって変わります。記事を外注すれば社内の時間は減り、方針の相談だけを外注すれば記事を書く時間は社内に残ります。見積もりを比べるときは、外注費と社内の作業費の合計で比べます。
手順4:回収の期限を決める
最後に、払ったお金を何か月で取り戻したいかを決めます。これは計算で出る数字ではなく、社長が決める数字です。
決めるときに考えるのは、資金繰りと、SEO以外の使い道です。1年以内に取り戻さないと資金が苦しいなら、期限は12か月です。2年かけても問題なく、その間に積み上がる記事に価値を感じるなら、24か月を選べます。
期限を決めずに始めると、半年たって成果が薄いときに「もう少し続けるべきか」の判断がつきません。この期限は、あとで出てくる「続けるか、やめるか」の判断にも使います。
仮の数字で上限額を計算する
4つの数字を、1つの会社に当てはめて計算します。仮に、年商3億円ほどで、工場向けの部品を作っている会社だとします。
| 項目 | 仮の数字 |
|---|---|
| 受注1件の粗利 | 80万円 |
| 問い合わせから受注になる割合 | 20% |
| 問い合わせ1件の粗利 | 16万円 |
| 増える問い合わせ | 上の表のとおり、13か月目以降は月4件 |
| 社内の作業費 | 月5万円(月10時間 × 5,000円) |
| 見積もりの外注費 | 月30万円 |
月ごとの累計の比較
外注費30万円と社内の作業費5万円で、月の支払いは35万円です。これと、増えた問い合わせから見込める粗利を、累計で並べます。
| 時点 | 累計の支払い | 累計の問い合わせ | 累計の粗利 | 差し引き |
|---|---|---|---|---|
| 3か月目 | 105万円 | 0件 | 0円 | −105万円 |
| 6か月目 | 210万円 | 3件 | 48万円 | −162万円 |
| 9か月目 | 315万円 | 9件 | 144万円 | −171万円 |
| 12か月目 | 420万円 | 18件 | 288万円 | −132万円 |
| 16か月目 | 560万円 | 34件 | 544万円 | −16万円 |
| 17か月目 | 595万円 | 38件 | 608万円 | +13万円 |
| 24か月目 | 840万円 | 66件 | 1,056万円 | +216万円 |
赤字は9か月目が底です。そこからは毎月縮みます。13か月目以降は、月の粗利64万円が月の支払い35万円を上回るからです。この例では17か月目に累計で黒字になりました。
大事なのは、12か月目の時点では132万円の赤字だということです。1年で判断すると「SEOは元が取れなかった」に見えます。けれど、この時点で毎月の収支はすでに黒字になっています。単月で見るか累計で見るか、1年で見るか2年で見るかで、同じ数字の見え方が変わります。
回収の期限ごとの上限額
では、この会社は月いくらまで払ってよいのか。回収の期限ごとに計算すると、次のようになります。
| 回収の期限 | 期限までの累計の粗利 | 月の支払いの上限 | 社内の作業費を引いた外注費の上限 |
|---|---|---|---|
| 12か月 | 288万円 | 24万円 | 19万円 |
| 18か月 | 672万円 | 約37万円 | 約32万円 |
| 24か月 | 1,056万円 | 44万円 | 39万円 |
月の支払いの上限は、期限までの累計の粗利を月数で割って出しています。たとえば24か月なら、1,056万円 ÷ 24 で44万円です。
見積もりの月30万円は、期限を12か月にすると上限の19万円を超えます。18か月や24か月なら上限の内側です。30万円が高いかどうかは、待てる月数しだいです。
この上限は、粗利をすべて回収に当てて損益がちょうど釣り合う額です。見込みは外れるものです。実際はここから何割か下げた金額を上限として置くことをおすすめします。
止めた後の効果は数えていない
この計算では、24か月目以降の効果と、契約をやめた後に記事が生み出す問い合わせを数えていません。前の章で書いたとおり、SEOで作った記事はサイトに残るので、止めた後も問い合わせが続くことはあります。
数えれば上限額は上がりますが、どのくらい続くかは読めません。上限を決める段階では数えずにおき、実際に続いた分は「思ったより得をした分」と考えておくほうが、判断を誤りにくくなります。
上限額から、頼み方を選ぶ
上限額が出たら、その金額で何を頼めるかを考えます。ここでも、外注費と社内の作業費を足して見るのがポイントです。
上限が低いとき:方針は外に、記事は社内で
外注費の上限が月15万円前後だとします。この金額では、記事を毎月何本も作ってもらうのは難しいでしょう。狙う言葉の選定や、サイトの点検、記事の方針の相談を外に頼み、記事を書く作業は社内で担う形が現実的です。
この場合、社内の作業時間が増えます。担当者が月30時間を使うなら、1時間5,000円で月15万円分です。外注費と合わせると月30万円になり、上限を超えるかもしれません。社内の時間が足りないまま始めると、記事が出ないまま外注費だけを払う月が続きます。
上限に余裕があるとき:記事の制作まで外に
外注費の上限が月30万円を超えるなら、記事の制作まで含めて頼む選択肢が出てきます。社内の作業は、記事の内容の確認や取材への協力に絞れます。
それでも、社内の確認はなくせません。自社の技術や事例を知っているのは社内の人だけだからです。取材の時間を惜しむと、どの会社でも書ける記事になり、問い合わせにつながりにくくなります。書き手の経験や専門性をどう記事に出すかは、
の考え方として
SEO対策とは?2026年版で触れています。
自社でやる場合も費用はゼロではない
外注せず、社内だけでSEOを進める会社もあります。Googleの「SEO業者の利用を検討する」のページでも、専門家に頼むとサイトの見え方が良くなり時間を節約できる可能性がある、と書く一方で、業者選びは慎重に行うよう注意を促しています。
社内でやる場合の費用は、ほぼ作業時間です。仮に社員が月40時間を記事づくりに使えば、1時間5,000円で月20万円です。外注費0円でも、この20万円を上の計算式の「月の支払い」に入れてください。そのうえで、社員がその時間でほかの仕事をしていたら生んでいたはずの売上も、頭の片隅に置いておきます。
エクスバンクの料金
参考として、エクスバンクのSEO支援の料金を書いておきます。SEOコンサルと月次レポートが月15万円から、月10本の記事制作と
の実装まで含むプランが月35万円から(いずれも税別)です。AIの検索結果で引用されるための対策を加える場合は、月8万円(税別)を追加でいただいています。
サービスページでは、効果が出るまでの期間を、競争の少ない言葉なら1〜2か月、競争の激しい言葉なら6〜12か月の中長期で考えてください、と案内しています。順位の保証はしていません。弊社に見積もりを依頼する場合も、この記事の計算に当てはめて、上限の内側に収まるかを確かめてから決めてください。
続けるか、やめるかを決める目安
SEOは、始める判断より、続けるかやめるかの判断のほうが難しいです。払った分を取り戻したい気持ちが判断を曇らせるからです。始める前に、見直す時期と見る数字を決めておきます。
3か月目:作業が約束どおり進んでいるか
最初の3か月は、問い合わせが増えていなくても不自然ではありません。この時期に見るのは成果ではなく、作業です。予定した記事が公開されたか、サイトの修正が終わったか。作業が遅れているなら、成果が出始める月も後ろにずれます。
作業の進み具合は、見積書の作業が回数と成果物で書かれていれば確かめられます。書き方の確かめ方は
SEO対策代行の選び方で扱っています。
6か月目:途中の数字が動いているか
6か月目あたりからは、問い合わせの前の段階の数字を見ます。
で、狙った言葉での表示回数と平均の掲載順位、クリック数が増えているか。
で、記事から問い合わせページに進む人が出ているか。
問い合わせはまだ少なくても、これらが増えていれば、見込みの表に沿って進んでいる可能性があります。表示回数すら増えていないなら、狙う言葉の選び方か、記事の中身を見直す時期です。
12か月目:見込みの表と実績を比べる
12か月目には、手順2で置いた見込みの表と、実際の問い合わせの件数を比べます。見込みより少なければ、表を実績に合わせて書き直し、上限額を計算し直します。
計算し直した上限が今の支払いを下回るなら、作業の範囲を減らすか、やめるかを検討します。このとき、これまで払った420万円は判断に入れないでください。すでに払ったお金は、続けてもやめても戻りません。見るのは「これから払う金額」と「これから増える粗利」だけです。
やめる場合でも、公開した記事はサイトに残ります。記事の権利と、Search ConsoleやGA4のアカウントが自社の手元にあるかを、契約の段階で確かめておいてください。
記録がない会社は今月から数える
問い合わせ1件の粗利も、Webからの受注の割合も分からない、という会社は少なくありません。その場合は、SEOを始める前の月から、問い合わせの日付、経路、商談になったか、受注したか、粗利はいくらかを表に書き始めてください。
最初の計算は仮置きで構いません。数か月分の記録がたまれば、仮置きの数字を実績に置き換えられます。広告費と問い合わせ、受注を1枚の表で追う方法は、
広告の費用対効果を見るLooker Studioの型にまとめています。SEOの数字も同じ表に入れておくと、広告とSEOのどちらにお金を回すかを同じ物差しで比べられます。
まとめ
SEO対策の費用は、相場の早見表から選ぶより、自社の数字で上限を出したほうが、見積もりの良し悪しを判断しやすくなります。
- 問い合わせ1件の粗利は、受注1件の粗利 × 問い合わせから受注になる割合で出す
- 増える問い合わせは、0件から少しずつ増える形で月ごとに置く
- 社内の作業時間を金額にして、外注費に足す
- 回収の期限までの累計の粗利を月数で割った額が、月の支払いの上限
- 上限は損益が釣り合う額なので、実際はそこから下げて置く
- 見直すときは、すでに払った金額ではなく、これからの支払いと粗利で判断する
同じ月30万円の見積もりでも、12か月で取り戻したい会社には高く、24か月待てる会社には上限の内側に収まることがあります。見積もりを比べる前に、まず自社が何か月待てるかを決めてください。