「 の月額が高い気がする」と感じ始めたら、自社構築の検討時期です。ただし全社が自社構築すべきとは言いません。本記事では 4 つの問いに答える形で、御社の文脈に合った判断材料を提示します。
まず数字を並べる — Dropbox vs 自社構築

| プラン / 構成 | ユーザー数 | 月額(合計) | 容量 | 1 ユーザーあたり月額 |
|---|---|---|---|---|
| Dropbox Plus(個人) | 1 | 1,500 円 | 2 TB | 1,500 円 |
| Dropbox Business Standard | 3 | 6,750 円 | 5 TB 共有 | 2,250 円 |
| Dropbox Business Standard | 5 | 11,250 円 | 5 TB 共有 | 2,250 円 |
| Dropbox Business Advanced | 5 | 18,000 円 | 15 TB 共有 | 3,600 円 |
| + 自社構築 | 無制限 | 約 920 円 | 100 GB(拡張可) | 184 円(5 名想定) |
5 ユーザーチームで Dropbox Business Standard と比較すると、自社構築は約 12 倍安い計算です。同じ計算を 20 ユーザー規模で行うと、Dropbox 月 45,000 円 vs 自社 月 1,000 円弱で45 倍のコスト差になります。
ただし数字だけで判断すると失敗します。以下の 4 つの問いに答えてから決めてください。
4 つの問い — 御社の文脈で判断する
問い 1: ストレージ要件は実際にどの程度ですか?

「念の為」で容量を見積もると過剰投資になります。実勢を見てください。
| 実勢容量 | 推奨構成 | 月額目安 |
|---|---|---|
| 100 GB 以下 | 自社 (KVM 2 等)+ R2 バックアップ | 約 920 円 |
| 100 GB〜1 TB | 自社 VPS(KVM 4 等)+ R2 | 約 1,800 円 |
| 1 TB〜5 TB | 専用 VPS + 大容量 R2、または Dropbox Business 検討 | 5,000 円〜 |
| 5 TB 以上 | Dropbox / / Google Workspace の方が運用負荷低い場合あり | 11,250 円〜 |
100 GB 以下なら自社構築が圧倒的に有利。1 TB〜5 TB は中間領域で、運用コストとの兼ね合いになります。動画素材・PSD などで 5 TB を恒常的に使うチームは Dropbox / Box の方が運用工数が読めます。
問い 2: ユーザー数と権限粒度は?
| ユーザー数 | 推奨 |
|---|---|
| 1〜2 人 | Dropbox Plus 個人プラン(1,500 円)でも経済的に成立 |
| 3〜10 人 | 自社構築が圧倒的有利(コスト 6 倍以上の差) |
| 10〜30 人 | 自社構築有利、ただし権限管理の運用設計が必要 |
| 30 人以上 | Dropbox Business / の運用機能の優位性が出始める |
権限管理が複雑(部門別アクセス制御、外部共有ガバナンス、など)になると、Nextcloud でも実装可能ですが、運用工数が読みにくくなります。SaaS のサポート体制を 30 人以上規模で買う判断はあり得ます。
問い 3: 社内に技術担当はいますか?
| 体制 | 推奨 |
|---|---|
| Linux + が日常 | 自社構築 OK、運用も自走可 |
| Web ディレクター + 外部開発(時間契約) | 自社構築 OK、初期構築は外注、運用ドキュメント整備で内製化 |
| 技術担当不在 | 構築 + 6 ヶ月伴走運用パッケージを契約、または SaaS 継続 |
| 完全に IT 苦手 | SaaS 継続が安全。「壊れた時に対応できる前提」がない自社構築は危険 |
「自社構築」とは構築だけでなく、3 年運用し続ける覚悟を含みます。サーバー OS 更新、 証明書更新、Nextcloud マイナーバージョン更新、調整など、年 10〜20 時間程度の運用工数が発生します。
問い 4: 「壊れた時」の復元頻度は?
| ニーズ | 推奨 |
|---|---|
| ファイル誤削除を数日以内に取り戻せれば OK | Nextcloud のゴミ箱(30 日保管)+ R2 バックアップで十分 |
| 過去半年〜1 年の任意時点に戻せる必要あり | + R2 で日次 7 + 週次 4 + 月次 6 世代保管(月 22 円) |
| 規制対応で 7 年以上の保管義務あり | R2 + S3 Glacier Deep Archive 等の長期保管組み合わせ、または専用 SaaS |
ほとんどの中小企業は最初の 2 つで足ります。本シリーズ第 2 回で構築した restic + R2 バックアップ(月 22 円)は、最初の 2 年は確実にカバーします。
ケース別の推奨
4 つの問いに答えた結果から、推奨構成が見えてきます。
| ケース | 構成 | 月額 | 移行難度 |
|---|---|---|---|
| 個人事業主、データ 50GB | Dropbox Plus か Nextcloud 自社(どちらでも) | 920〜1,500 円 | 低 |
| 5 名以下、技術担当あり、データ 200GB | Nextcloud + R2 自社構築 | 約 920 円 | 中 |
| 10 名、技術担当不在、データ 500GB | Dropbox Business、または EXBANK 構築代行 | 11,250 円 / 1,500 円〜 | 中 |
| 30 名以上、外部共有が多い | Dropbox Business / Box | 22,500 円〜 | 低(既存運用継続) |
| 規制業界(金融・医療等) | ベンダー選定が別観点(コンプライアンス) | - | - |
💡 KEY TAKEAWAYS
「全社で自社構築すべき」という主張ではありません。御社の文脈(容量・人数・技術力・復元頻度)で判断軸を作ってください。
移行ステップ全体像(自社構築する場合)
ここからは「自社構築する」と決めた場合のステップを概観します。
Phase 1: 構築(30〜60 分)
- VPS 契約( / さくら / ConoHa など)
- Docker + docker-compose インストール
- Nextcloud 公式イメージで起動(DB + 含む)
- ドメイン + 設定
- 管理者アカウント初期設定
Phase 2: 移行(数時間〜2 日)
- を使い Dropbox API → Nextcloud へ直接転送
- ローカル PC で Nextcloud Desktop クライアント設定
- 同期完了確認後、Dropbox の旧フォルダはアーカイブ扱いに
- 1 ヶ月程度両方併用してから Dropbox 解約
Phase 3: 運用設計(1〜2 時間)
- Redis ロックバックエンド設定(第 1 回参照)
- クライアント側の除外パターン(
node_modules、.next、.htaccess等) - restic + R2 バックアップ(第 2 回参照)
- 月 1 回のを で記録
Phase 4: 6 ヶ月運用検証
「組んで満足」が一番多い失敗パターンです。6 ヶ月運用してみて初めて自社運用が成立しているか分かります。月 1 回の振り返り(バックアップ動いている? ロックエラー出てない? 容量足りている?)を運用フローに組み込んでください。
次のアクション
「自社で組むか、SaaS を続けるか」は技術判断ではなく経営判断です。コストだけで決めず、技術力・運用継続性・データ主権を含めて意思決定してください。
本シリーズの第 1 回「Nextcloud のロック詰まりは Redis 化で解決する」では実際の事故と復旧手順を、第 2 回「Cloudflare R2 で VPS を月 22 円でバックアップ」では具体的な構築コマンドを公開しています。3 本通読していただくと、自社で組むか / 外注か / SaaS 継続かの判断材料が揃います。
判断に迷う場合は、まず 細マッチョ企業診断 で御社の業務体力を 3 分でセルフチェックください。筋力(実行力)スコアが低い領域は SaaS 継続が安全、神経系(判断速度)スコアが高い領域は自社構築の選択肢が広がります。EXBANK では構築代行と 6 ヶ月伴走運用も承っています。
