仕事の種類ごとの向き不向き
ここからは、弊社の実例ではなく、ほかの会社で使うならどう考えるかという見立てです。検索上位の記事でもよく扱われている部署ごとに書きます。
判断の物差しはひとつです。
材料がファイルやデータになっていて、結果を人間が確認できる仕事 は向いています。材料が人の頭の中にしかない仕事や、結果をすぐに相手へ届けてしまう仕事は向きません。
経理
請求書や集計表の下書きは、いちばん向いている仕事だと思います。材料が数字で、正解が確かめやすいからです。
気をつけるのは、発行や振込のような操作です。これは下書きと違って取り消しがききません。弊社でも請求書は下書きまでで、発行は人間がやっています。
営業
お客様とのやり取りを整理する使い方は、弊社の連絡窓口の整理と同じ形です。案件ごとのまとめや、返信案、提案書のたたき台も作れるはずです。
一方で、お客様に届くメールをAIが自分で送る形はおすすめしません。相手との関係は一度こじれると戻らないので、ここは人間の仕事として残すべきです。
マーケティング
ブログの下調べや、どのページが読まれているかの調査は、弊社で実際に回している仕事です。調べて表にする、下書きを作る、一覧に書き出す、という流れはほかの会社でもそのまま使えます。
広告の文章なども下書きは作れます。ただ、世に出る文章は最後に人が読む。これは変えないほうがいいです。
総務と社内の事務
日報や社内向けの報告書のように、毎回同じ形の書類は向いています。社外に出ないので、失敗しても影響が小さいのもいいところです。
社内規程の文面や、稟議の書式をそろえる作業も候補になります。ただし規程の中身そのものを決めるのは人間です。AIに作らせるのは、決まった内容を決まった形に整えるところまで。ここを取り違えると、誰も読んでいない規程が増えるだけです。
資料作成と議事録
会議の文字起こしがファイルとして手元にあれば、それを読んで議事録の形に整える作業は頼めます。資料のたたき台も同じです。材料がないと作れないので、まず会議の録音や文字起こしを残す習慣が先になります。
議事録で気をつけたいのは、誰が何を決めたかの部分です。AIは文字起こしの言い回しから決定事項を推し量るので、決まっていないことを決まったように書く可能性があります。会議に出ていた人が読んでから配る。この順番は崩さないでください。
データ整理
複数の表をひとつにまとめる、形式をそろえる、といった作業は向いています。弊社の連絡窓口の整理も、形の違う情報をひとつの一覧にする仕事です。
似た仕事をする道具に、決まった画面操作を記録して繰り返す
RPA や、ツール同士をつないで自動で流す
n8n があります。毎回まったく同じ手順ならそちらでも回せます。中身を読んで判断を少し含む下書きになると、Claude Codeのほうが頼みやすいはずです。
任せていない仕事
ここがこの記事で一番言いたいところです。弊社では、次の作業をAIに単独でやらせない決まりにしています。
取り消せない作業の一覧
- お客様へのメールやメッセージの送信
- 請求書の発行
- ホームページへの公開
- データの削除
どれも、一度やったら取り消せない作業です。例外はありません。
線を引いた理由
AIは自分の作業に自信を持ちすぎることがあって、確認を飛ばして次に進もうとします。だから、下書きまではAI、確認して最後のボタンを押すのは人間、と線を引いています。
この線引きにたどり着くまでの失敗は
AIに仕事をどこまで任せていいか に書きました。
線を引くと、任せる範囲が狭くなると思われるかもしれません。実際は逆です。最後に人間が見るとわかっていれば、下書きの段階では思い切って任せられます。
確認手順の仕組み化
ルールを紙に書いただけでは、忙しい日に忘れます。そこで弊社では、公開前の確認手順を仕組みにしています。
たとえばブログ記事は、下書き、AIっぽい言い回しのチェック、社長の承認という順番を飛ばせないようにしています。請求書は会計ソフトの下書きで止まる作りなので、人間が送信しない限り取引先には届きません。
Claude Codeには、作業の前後に決まった処理を自動で挟む
フック という仕組みもあると公式の説明書に書かれています。「覚えておく」を「仕組みで止める」に置き換える道具として使えます。
始める前に社長が決めること
導入の話になると、どのプランにするかから考えがちです。順番は逆です。先に決めるのは、何を任せて、どこで止めるかです。
プランの選び方
プランは、任せる仕事と使う人数が決まってから選べば十分です。
1人で試すなら、個人向けのプランから始められます。複数の社員で使うなら、席ごとに契約するTeamや、Enterpriseが候補になります。
見落としやすいのが利用規約です。契約の種類によって、適用される規約が変わります。セキュリティの説明書によれば、TeamとEnterpriseには企業向けの規約、FreeとProとMaxには個人向けの規約が適用されます。お客様の情報を扱うなら、どちらの規約で使うかは法務や顧問の方と確認しておくと安心です。
費用の見積もり方
費用を考えるとき、月々の契約料だけを見ると判断を誤ります。実際にかかるのは、ざっくり3種類です。
ひとつは契約料。これは料金ページを見ればわかります。
もうひとつは、最初の準備にかかる社内の時間です。任せる仕事の手順を書き出し、試して、直す。この往復は、どの会社でも省けません。
最後が、AIの下書きを確認する人の時間です。確認は省けません。ここは毎月ずっと残ります。「AIを入れたら人の手がゼロになる」という前提で計算すると、あとで話が合わなくなります。
この3つを並べたうえで、その仕事を人が手でやり続けた場合と比べてください。判断を分けやすいのは、契約料よりも、準備に社長自身が時間を割けるかどうかです。
社内ルールの最低限
最初から分厚い規程を作る必要はありません。最低限、次の2つを書き出してください。
- AIに単独でやらせない作業(送信、発行、公開、削除など)
- AIに渡してはいけない情報(どの顧客データまで扱ってよいか)
この2つがあれば、社員が迷ったときに立ち返る場所ができます。
機密情報の扱い
Claude Codeは、指定したフォルダの中身を読んで作業します。裏を返すと、そのフォルダに置いたものは読まれる前提です。
標準の設定では、作業を始めたフォルダの外に書き込むには許可が必要で、外のファイルを読む前にも確認を求めるそうです(Anthropicのセキュリティの説明書より)。それでも、作業用のフォルダに何を置くかは人間が決めることです。顧客名簿や給与の情報を、なんとなく同じフォルダに入れておくのはやめましょう。
個人向けの契約では、会話のデータを学習に使うかどうかを設定画面で変えられると公式に書かれています。契約したら一度確認してください。
元に戻せる状態づくり
AIが書き換えたファイルは、元に戻せるようにしておきます。
弊社のホームページのデータを別の保管場所(GitHub)へ移したのは、別のパソコンから作業するためでした。同時に、いつ何が変わったかの記録が残る状態にもなっています。書類のフォルダでも、作業前に複製を取っておくだけで事故の怖さはだいぶ変わります。
公式が用意している安全装置
「AIにパソコンを触らせて大丈夫なのか」という質問もよくいただきます。答えの材料は、Anthropicが公開しているセキュリティの説明書にあります。書かれている仕組みを、社長向けに言い換えます。
最初は読み取りだけの設定
手動で確認する設定(Manual mode)の場合、Claude Codeは読み取りだけの状態から始まります。ファイルを編集する、コマンドを実行する、といった場面では先に許可を求め、1回だけ許すか、以後も許すかを人間が選びます。
別に、AIの判断を別のAIが見張って危ない操作を止める自動の設定もあると書かれています。どちらで始まるかはプランや設定によって違うそうです。
渡した権限しか使えない
説明書には、はっきりこう書かれています。Claude Codeは与えた権限しか持たない。許可する前に、提案された内容が安全かを確認するのは使う人の責任だ、と。
ここは経営者として受け止めておきたい一文です。AIが勝手にやった、という言い訳は通りません。許可を出した人の責任になる。だからこそ、社内で「誰が何を許可してよいか」を決めておく意味があります。
外部ツールとつなぐときの注意
外部のサービスとは、
MCP という共通の規格でつなげます。例として挙がっているのは、Googleドライブの資料を読む、Slackからデータを取ってくる、といった使い方です。
便利な反面、注意書きもあります。説明書によると、Anthropicは接続先の審査をしているものの、個々の接続先の安全性を監査したり管理したりはしていないと書かれています。自分で作ったものか、信頼できる提供元のものを使うよう勧めています。社外の誰かが作った接続先を、よく調べずに社内のデータとつなぐのは避けてください。
よくある失敗
検索上位の記事でもよく挙がっている失敗を、弊社の考え方と合わせて書きます。
最初から全部つなぐ
メールも会計ソフトもチャットも、一度に全部つなごうとする失敗です。
どこかで動かなくなったときに、原因がどこにあるのかわからなくなります。何より、AIの癖がわからないうちに扱える範囲を広げると、事故が起きたときの被害も広がります。弊社でも、請求書、連絡窓口の整理、日報、ブログと、ひとつずつ増やしてきました。
例外を考えない
いつもの流れだけを想定して手順を書くと、例外が来たときに止まるか、もっと悪いと間違ったまま進みます。
たとえば請求書なら、今月だけ金額の計算が違う取引先がある、集計データが届いていない、といった場面です。「いつもと違ったら作業を止めて人間に聞く」と手順に書いておくだけで、事故はかなり防げます。
例外は、最初から全部は思いつけません。動かしてみて初めて気づくものです。気づいたら、その日のうちに手順へ1行足す。この積み重ねで、手順の文書が少しずつ頼れるものになっていきます。
1人しか使えない
社長や詳しい社員1人だけが使えて、その人が休むと止まる状態です。
手順が本人の頭の中にしかないと、ほかの人は同じ指示を出せません。弊社で手順を指示書やスキルとして文書にしているのは、この失敗を避けるためでもあります。
社内への広げ方
社長が最初に触る意味
導入を社員の誰かに丸ごと任せたくなる気持ちはわかります。ただ、最初の1つは社長自身が触ることをおすすめします。
理由は単純で、任せていい仕事と止めるべき仕事の線を引けるのは、会社の責任を負う人だけだからです。請求書を発行してよいか、お客様にどこまで自動で返してよいか。これは現場の判断では決めきれません。
プログラムは書けなくていい。線を引くところまでは、社長の仕事です。
最初の1つの選び方
最初の1つは「毎月同じ手順で、間違えても下書きで止まる仕事」がいいと思います。請求書の下書き、定例の報告書、会議メモの清書あたりです。
逆に、最初からお客様に直接届く仕事を任せるのはおすすめしません。AIの癖がわからないうちに事故が起きると、社内で「やっぱりAIは使えない」という空気になって、そこで止まってしまいます。
手順を文書に残す
うまく回った手順は、その日のうちに文書にします。どのフォルダを読むか、何を作るか、どこで止まるか、例外のときはどうするか。
この文書がそのまま、次に同じ作業を頼むときの指示になります。作業を分けて複数のAIに並べて進めさせる
サブエージェント のような仕組みもありますが、それは手順が固まってからで十分です。
2人目に渡す
手順の文書ができたら、自分以外の社員に同じ作業をやってもらいます。うまくいかなければ、文書のほうが足りていないということです。
2人目が迷わず回せたら、その仕事は社長個人の工夫から、会社の仕組みに変わります。次の仕事に広げるのは、ここまで来てからで遅くありません。
焦って3つ4つ同時に始めると、どれも中途半端に終わりがちです。弊社も1つずつ増やしてきました。
Claude Code 業務活用講座
社内でどう使い始めるか迷っている会社向けに、エクスバンクではエンジニアではない方のための講座を開いています。プログラミングの経験は要りません。
講座の中身
Zoomのライブで行い、録画は受講後12ヶ月見られます。2時間ずつ5つの単元で進めます。
1. 導入と業務環境の構築
2. データ取得と整形の自動化
3. 文書や資料作成の自動化
4. メールとSNSでのやり取りの自動化
5. 統合演習と業界別の業務の流れづくり
12業種のケーススタディを使うので、自社に近い業種の例から考えられます。
| プラン | 時間 | 受講料(1人、税別) |
|---|---|---|
| Aプラン | 10時間 | 30万円 |
| Bプラン | 15時間(Aの内容+Google AntiGravity 5時間) | 40万円 |
申し込み前に確認したいこと
法人での受講は請求書払いに対応していて、複数名でまとめて受講できます。修了証もお出しします。
キャンセルは、開講の14日前までなら全額返金、7日前までなら50%返金です。開催日程は講座ページで確認してください。
くわしくは
Claude Code 業務活用講座 のページをご覧ください。
まとめ
Claude Codeは、名前に「Code」とあっても、プログラムを書かない会社の事務に使えるAIです。エクスバンクでは、請求書の下書き、連絡窓口の整理、日報、ブログの下調べ、ホームページの管理、WordPressへの投稿を任せています。
大事なのは、何を任せるかより、どこで止めるかです。送信、発行、公開、削除のような取り消せない作業は人間が確認してから押す。この線を先に引いておけば、下書きの段階では安心して任せられます。
最初の1つは、毎月同じ手順で、間違えても下書きで止まる仕事から選んでください。